――笹原さん、『RIZIN男祭り』東京ドームはオープニングの「フンドシ・アベンジャーズ」から凄まじかったです!
笹原 世界広しと言えど、フンドシから始まってタイトルマッチで終わるイベントはRIZINだけですよ!日本が誇る奇祭です(笑)。
――『男祭り』と言えば、PRDIEのときからやっていた太鼓が象徴ですが、今回の大会ポスターもそのビジュアルでした。
笹原 PRIDEからやってきている社長やボクは太鼓にこだわりがありましたけど、広報の横島さんとか若手社員からすると、「なんでそんなに太鼓に命かけてんの?」という感じだったかもしれませんね(笑)。
――かつて『男祭り』で太鼓を叩いていた高田延彦さんにもオファーしたけど、「当該イベントには関わらない」と拒否されてしまって。
笹原 高田さんには太鼓じゃなくて「出てこいや!」のオファーですね。太鼓はフンドシで叩くからお尻を出さなきゃいけない。以前の高田さんは事前にしっかりと身体を作って太鼓を叩いていたんですけど、今回は時間的に間に合わないと判断して「男の中の男たちよ、出てこいや!」と叫んでいただけないですか?とオファーしたんです。
――高田延彦の美学として、だらしないお尻は見せられないってことですね(笑)。
笹原 高田さんの了承を得られたとしても、太鼓をどうするのか。いろんなアイデアが出たなかで「みんなで叩くのがいいんじゃないか」ってことで、RIZINのOBを中心に声をかけたんです。高阪(剛)さん、川尻(達也)さん、石渡(伸太郎)さんは即オッケーをいただけた。でもボクはどうしても神取(忍)さんにやってもらいたかったんですよ!これは今回の『男祭り』で何がなんでも実現させたかったんです!
――太鼓にフンドシ、高田さんに神取さんと、若手社員が呆れるのがよくわかる(笑)。
笹原 でも神取さんにオファーしたら、すんなりOKをいただいて、これで『男祭り』の重要なピースがハマったと(笑)。
――神取さんといえばギャビ・ガルシア戦が流れたままRIZINの区切りの付き方にモヤモヤしてる……のはボクくらいかもしれないけど(笑)、この太鼓のオファーは素晴らしいです。
笹原 神取さんってじつはRIZINで1試合もやってないんですけど、「RIZINで13戦してます!」みたいなオーラがあるじゃないですか(笑)。実際に初期RIZINを話題面から支えてくれましたし、それこそ高阪さん、川尻さんや石渡さんにも苦しい頃のRIZINに支えていただいたという感謝の心がありますけど。
――RIZINの最敬礼がフンドシのオファーなんですね(笑)。
笹原 まぁでもその3人は付き合いが長いから「またRIZINがわけのわからないことやろうとしてる」って感じで、こっちの意図をすぐ汲み取ってくれたんです(笑)。でも日本人選手だけじゃなくて外国人ファイターも入れたほうがいいだろうってなって、柏木さんからマーク・コールマン、イリー・プロハースカ、ブアカーオにオファーしてもらったんです。

――PRIDE時代、高田さんのフンドシ姿って外国人から好奇の目で見られていて「タカダショーツ」と呼ばれてたんですよね。で、『kamipro』という雑誌で(アントニオ・ホドリゴ・)ノゲイラにフンドシ姿の特写をやってもらったときに「写真を海外には流さないでくれ」という条件で。お尻を出すことの恥ずかしさもあったり、何か誤解される格好ではあったみたいなんです。でも、ノゲイラは「タカダショーツ」の意味を理解していたからフンドシを締めてくれたんですけど。
笹原 そこはイリーたちも同じ姿勢ですね。前日のリハーサルのときに、みんなジャージで参加してたんですけど、イリーだけはフンドシを締めてましたから(笑)。
――リハからやる気満々!(笑)。
笹原 「俺のフンドシ姿を見てくれ!」っていう感じで、フンドシでドーム中を歩き回ってましたから(笑)。日本の昔から伝わるジャパニーズスタイルで祭りに参加できることに大興奮してました。おまけに終わったあとに謝礼を渡そうとしたら、「いや、いらない。お金のためにやったことじゃないから」って言われたんですよ。イリーこそ男の中の男ですよ!
――さすがだなあ(笑)。コールマンもPRIDEやハッスルで日本のプロレス格闘技文化に浸かっているからノリノリで。
笹原 コールマンは「10日前に来日してしっかり身体を作りたい」というリクエストがありましたよ(笑)。
――それ、絶対に日本観光したいだけですよ!(笑)。
笹原 まあでもコールマンもハッスルしてましたよ。前々日かな。選手が宿泊しているホテル前の道路に人だかりができてるんですよ。なんの騒ぎかと思ったら、コールマンが上半身裸で吠えていて(笑)。
――ハハハハハハハ!
笹原 アメリカだとレジェンドとはいえコールマンにファンが群がらないじゃないですか。でもひさしぶりの日本でキャーキャー騒がれて嬉しかったんじゃないですかね。
――問題になっているホテル前の出待ちに加えて、コールマンの上半身裸は禁止ですね(笑)。
笹原 ブアカーオに至ってはもともと『男祭り』で試合を組む予定で交渉してたんですよ。
――けっこうなスーパーファイトを調整していたとか。
笹原 結局、話がまとまらなかったんですけど、試合じゃなくて太鼓をやってもらおうと。柏木さんに聞いてもらったんですよ(笑)。
――柏木さん、舌打ちしませんでした?「カードが白紙になった上にこんなオファーをする役目を!?」って(笑)。
笹原 舌打ちはしてませんでしたけど、頭は抱えてましたね(笑)。でも柏木さんが交渉したらすんなりOKをもらえたんです。ただ、ブアカーオは最初はフンドシになることを嫌がってたらしいんですよね。
――あー、ブアカーオはK-1MAXだからPRIDEの文化を把握できてない。
笹原 でも、「全員がフンドシになるよ」と伝えたら「あ、そうなの?」って受け入れてもらって、そんなこんなで7人のRIZINフンドシ・アベンジャーズが完成したわけですよ!
――最後に榊原さんもフンドシ姿で開幕宣言!

笹原 でも社長の本音は高田さんにやってほしかったんですよ。社長の格闘技の歴史は、高田さんと東京ドームで始まっていますから。
――1997年10月11日、PRIDE.1のヒクソン・グレイシー戦ですね……。
笹原 そのPRIDEが始まった東京ドームで、しかもRIZIN10周年の男祭り。苦楽を共にした高田さんにやっていただくのがそりゃ一番ふさわしい。でも社長のオファーに反応がなくて、いきなりインスタに声明が上がって……で、最終的に社長がやることになったんですけど、社長の中では高田さんのポジションを無理やり奪ってやるみたいな感じになるのも嫌でしょうし、ずっと迷っていたんですよ。
――榊原さんの心中を察すると、それは理解できますね。
笹原 でも「やる」と決断してからは、毎日のようにトレーニングして、食事制限もして、おまけに日サロに通って身体を焼いて。まさに「焼ける勇気を持って勝ちに行け」ですよ!(笑)。
――ハハハハハ!
笹原 この企画、極秘で進めていたので、何も知らない人は「あれ?榊原さん、やけに焼けてるな」と不思議に思っていたと思います(笑)。
――そう考えると、リング上で脇を固めた笹原さんと佐伯さんがフンドシにならなかったのは男じゃないですよ。
笹原 いやいや、ボクも全然フンドシには抵抗はないですよ。でもあそこで目立つのは社長だけでいいと思ったし、そもそもボクも佐伯さんもあそこでリングに上がる予定はなかったんですよ。社長が大会の3日前くらいに急に「ササと佐伯さんも上がってよ」って言われて。最終的には神輿を担ぐ役回りというか、悟空をアシストするボクが沙悟浄で、佐伯さんは猪八戒みたいなかたちになったんです(笑)。
――たしかにあそこで猪八戒・佐伯さんがフンドシになってたら、面白すぎて榊原さんを食っちゃいますね。
笹原 だから社長に言ったんですよ。「社長やみんなが想像している以上に佐伯さんの身体は汚いからやめたほうがいいです!」って(笑)。
――ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
笹原 なので祭りの法被を着て腕組みするかたちになりました(笑)。
――榊原さんが大会総括で高田さんと揉めた記憶がないと。
笹原 ケンカ別れしたわけじゃなくて、すれ違いなんだと思うんですけどね。
――榊原さんが高田さんの役目は奪うつもりはなくても、結果的に榊原さんがスポークスマンとして“ビンス・マクマホン化”した流れがあったから高田さんが身を引いた雰囲気もありますよね。
笹原 そこも社長が望んでそうなっていったわけでもないんですよね。いまの時代に合わせて少しずつスタイルを変えていった結果というか。ボクなんかが社長の成長物語なんていうのはおこがましいですけど、やっぱり時代の中で生きていかなきゃいけないし、戦っていかなきゃいけない。そういう意味では高田さんはずっとPRIDEの頃からの高田統括本部長のままのスタイルだった。それが悪いというわけではなく、高田さんの望む形とボクらが考えている形がちょっとずつズレができてしまったのかなと思います。
――PRIDE時代の榊原さんって、猪木さんや石井館長、谷川(貞治)さんと比べるとは愛嬌がないっていうか、あんまりメディアを受けするような人ではなかったですよね。
笹原 冷たい感じのキャラクターでしたからね。「インテリ○○◯」とか言われたり(笑)。
――○○◯の3文字は「メガネ」ですかね(笑)。猪木さんがPRIDEのエグゼクティブ・プロデューサーをやっているときに高田さんがスポークスマン的役割をやるようになったじゃないですか。いろんな事情があって猪木さんはPRIDEを離れましたけど……。
笹原 社長の総括の中で「去る者は追わず」と言ったじゃないですか。
――あの言葉、PRIDE時代をよく知るファンにはたまらないんですよね。単なる冷たいものではない。
・「去る者は追わず」の真意とは何か
・「東京ドームは負け戦」のはずだった
・東京ドームを揺らす朝倉未来の求心力
・佐藤大介の煽りV史上最高傑作「朝久vsウザ強」
・篠塚辰樹、田丸辰、西谷大成はよくやった
・中村、Uはオマエなんだよ。
・皇治にマイクを渡さなかった理由
・非UFCで一番面白い?RIZINフェザー級
・ありがとうクレベル、鈴木千裕
・アサシン、JTTガール、ヒラチルになろう……21,000字の記事はまだまだ続く
この続きとRIZIN男祭り、佐藤将光、水野新太、木村響子、ウナギ・サヤカvs前田日明…などの「記事15本14万字詰め合わせ」が800円(税込み)が読める詰め合わせセットはコチラ
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コメント
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比喩や引用が最高w