10周年を迎えるRIZIN。大会後の笹原さんインタビューは恒例となっていますが、始まりは2016年大晦日のものでした。<2025年の感想つき>であらためて振り返ってみましょう!<聞き手/ジャン斉藤>


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世界のTK“引退激勝”高阪剛16000字インタビュー


<この記事は2017年1月に掲載されたものです>

――
年末はお疲れさまでした!

笹原 本当に疲れました……想定外のことがいろいろと起きましたから。

――たとえば欠場が相次ぎましたね。ヴァンダレイ・シウバや神取忍の欠場、大会直前にはチャールズ“クレイジー・ホース”ベネット(木村ミノルとのMMAリマッチ)がアメリカを出国できないというトラブルに見舞われたり。

笹原 ベネットはビザ問題で出国できなくなっちゃったんですけど、今回のトラブルは本当に謎なんですねぇ。前回RIZINに出たときは、なんの問題もなかったですし、11月にはシュートボクシングさんの試合にも出たじゃないですか。

――ベネットにはドラッグ等の犯罪歴があったにせよ、急に出国できなくなったんですか。

笹原 外国人選手には出国トラブルやビザ問題はつきもので、いままではなんとか解決できたんですけど、今回はどうやっても無理でした。ベネットはたしかに犯罪歴がありますけど、本人は更生したいと強く考えていたんです。そのためにはRIZINで試合をして稼いで……という道が閉ざされてしまったかもしれないんですよね。

――うーん。

笹原 ベネットはマイアミの領事館で「俺はどうやって更生したらいいんだ!? 日本に行かせてくれ!」って2時間くらい粘ったみたいですけど、やっぱりダメで。

――更生の道を作ってあげたいですねぇ。

笹原 嘆願書運動とかやっても難しいんだろなぁ。

――なんとかなってもらいたいです! それで今日はRIZINについていろいろとお伺いしたいんですけど。笹原さんはおぼえてるかどうかはわからないですが、笹原さんがRIZINに関わるかどうかまだ決まってない頃に「PRIDEをやってる頃と比べてもう若くもないし、新しいイベントに携わったとしても、うまくやっていける自信がない」と言ってたんですね。

笹原 あ、おぼえてますよ。たしかに言ってました。

――この言葉が印象的だったんです。

笹原 ……まあ、いまだに自信はないんですけど。

――あ、いまだに。

笹原 いまだにね、自信はないんですよ(笑)。これは社長(榊原信行)とも話したんですけど、「昔のPRIDEの頃のように何も考えずに突き進んでいくのはさすがに無理だろう」と。だからこそ、いま凄く焦ってるんですよね。この2~3年のあいだにRIZINのかたちというか、しっかりとした土台を作らないといけないという焦りですよね。

――軌道に乗る土台作りが必要ということですね。

笹原 だから毎回毎回が勝負というか。若い頃のような持続的なパワーはもうないからですね。もちろん地道な努力が求められる世界ですけど、「これから10年かけて大きくして行きましょう!」という考えはあまりないです。なので周りが考えてる以上に焦ってるところはありますよ。

<2025年の感想>
旗揚げ時点では、時間をかけて大きくしていくつもりはなかった……という姿勢が面白い!


――興行師って経験も重要だとは思うんですが、プロレス格闘技界で“仕掛け人”と呼ばれる方々って後年になると凄くズレてくるなっていう印象が強いんですね。

笹原 うーん、それはですね、他人の話を聞かなくなるんじゃないですか(笑)。

――あー、なるほど。

笹原 だと思います。過去に成功を収めてきた経験があるので「自分が正しい!」と思いがちじゃないですか。若僧が何を言っても「おまえはわかってない!!」と突き放しがちですよね。

――成功体験を追い求めてしまうんですね。

笹原 そうそう。

――笹原さんはPRIDEやDREAMに関わってこの業界はずいぶんと長いわけですが、いまのMMAの世界にどうも馴染めないところってありますか?

笹原 社長は格闘技イベントに携わるのはPRIDE以来ですから、もしかしたらまだ細かい部分でフィットしないところがあるかもしれません。ただ、言っていることは相変わらずスケールがデカいんですけど(笑)。

――年末2日間開催とかちょっとおかしいですね(笑)。

<2025年の感想>
この頃の榊原さんは久しぶりに格闘技界に帰ってきた「浦島太郎」状態だった。旗揚げのコンセプト「SARABA」と「IZA」は榊原さん自身に向けられたものでもあった。

笹原 自分のことを言えば、DREAMにも関わっていて、日本のメジャーイベントが沈んでいくことを体感してきたので……。

――冬の時代を体感したわけですね。

笹原 UFCがどんどん大きくなっていくところを実体験したんで。だからRIZINをやると話を聞いたときに「いやいや、絶対に無理だろ」という考えがあったんですね。

――UFCがMMA市場を寡占している以上、メジャー志向のイベントは厳しいんじゃないか、と。

笹原 そうですね。「UFCにはどうやっても敵わない」というイメージは強かったので、RIZINに関わるかどうかの迷いはあったんですね。実際にやってみたら.....そんなこと全然気にすることはなかった(笑)。

――それは想像以上の手応えがRIZINにあったということですか? 

笹原 いや、「このイベントを成功させる!」という気持ちになったら、ほかのイベントがどうこう言っているヒマなんてないんですよ。ヒマがないというか、そんなものにかまっていられないというか。で、自分で言うのもなんですが……よくやってるほうだと思いますよっ!(ドン)。

――おお!! エンジンがかかってきました

笹原 自画自賛ですけど(笑)。

――たしかにUFCなんかに選手を独占されて、こんなに欠場者が出た中、よくまとまりましたね。

笹原 今回の大晦日も超目玉カードが用意できたわけでもなく、手持ちの材料で、RIZINの世界観を見せられたんじゃないかなって。


2016年12月29日のカード
北岡悟 vsダロン・クルックシャンク
ワジム・ネムコフ vsアリソン・ヴィセンテ
浅倉カンナ vsアリーシャ・ガルシア
矢地祐介 vsマリオ・シスムンド
和田竜光 vsカイ・カラフランス
元谷友貴 vsアラン・ナシメント
宮田和幸 vsアンディ・サワー
那須川天心 vsニキータ・サプン
中井りん vs村田夏南子
ワレンティン・モルダフスキー vsシモン・バヨル
アミール・アリアックバリ vsヒース・ヒーリング
バルト vs髙阪剛
ミルコ・クロコップ vsキング・モー


2016年12月31日のカード
那須川天心 vs カウイカ・オリージョ
ミルコ・クロコップ vs バルト
アミール・アリアックバリ vs ワレンティン・モルダフスキー
桜井“マッハ”速人vs 坂田亘
ギャビ・ガルシア vs 堀田祐美子 
才賀紀左衛門 vsディラン・ウエスト 
アンディ・ウィン vs山本美憂
RENA vsハンナ・タイソン
所英男 vs 山本アーセン
川尻達也 vsクロン・グレイシー
ミルコ・クロコップ vs アミール・アリアックバリ

<2025年の感想>
那須川天心のRIZIN初参戦、MMAデビュー戦、2連戦! とはいえ、このときの那須川天心の知名度はゼロに等しかった。地上波向けのカードはギャビ・ガルシアvs神取忍(欠場で堀田祐美子)、桜井“マッハ”速人vs 坂田亘。ミルコ、RENA、山本美憂、所英男と知名度のあるファイターを揃えて凌いだ感じです。天心が出場したこの回より、RIZINは新生K-1とは没交渉に……。当時のK-1は他のキック団体と交流することを歓迎してなかった。


――でも、どうしても“PRIDE基準”からRIZINを厳しく見られてしまうところってありますよね。

笹原 ああ、PRIDEと比較されるのはしょうがないというか……あの頃のPRIDEを知ってる人からすると物足りないとは思うでしょうし。ただ、UFCと比較されることは腹が立ちますね。

――腹が立つ!?(笑)。

笹原 UFCはこういうところがちゃんとしてるけど、RIZINはちゃんとしてないとか言われるじゃないですか。腹が立つというか、そこは「ちょっと待って」とは思いますね。

――UFCが絶対正義じゃないということですね。

笹原 そうです。もうちょっとちゃんと考察してくれよ、って思いますよ。そんなに簡単に白黒つけられる話じゃないだろって。もちろん逆のパターンもありますよ。例えば日本の格闘技にはドラマがあって、UFCにはドラマがないとか。そんなわけないじゃんって話じゃないですか。なんか、これまでに耳にした言説や報道みたいなものを無条件に信じている姿を見ると、こう怒りがふつふつと湧いてくるんです(笑)。

――怒りがRIZINの原動力(笑)。“PRIDE基準”じゃなくて、DREAMや戦極が消え去ったあとの“焼け野原”目線で見ると、RIZINは凄く頑張ってると思うんですけど。

笹原 ありがとうございます。誰も褒めてくれないんですけどね(笑)。

――あら、そうなんですか。

笹原 いや、多くのファンの方からは喜びの声は伝わってきますよ。

――業界内からは伝わってこないってことですか?

笹原 そうですねぇ。「失敗すればいいのに……」という声は聞こえてきますけど(笑)。

――ひえっ!? 被害妄想じゃないんですか?

<2025年の感想>
選手や関係者(とくに旧ABEMA界隈)の「RIZIN、失敗しろ」「こんなやり方じゃダメだ」という声はすごかったですね……。

笹原 RIZINが失敗して「だから言わんこっちゃない」とか、「最初からこうなることがわかっていた」みたいなことを、言いたい空気というか。誰かがチャレンジしているところを、高みから偉そうに言うのって楽だし、自分が偉くなったような気がするじゃないですか。私もRIZINに関わっていなかったら、同じようなことを言っていた気がします(笑)。

――ハハハハハ! そこは嫉妬というか、人間として素直な感情かもしれません。

・RIZINオリジナルの飛び道具を作りたい
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